医学知識を伝える

非医療者にも知っていてほしい緊急事態の知識。少しの知識で救える命がある。

こんばんは。

この週末私はACLSプロバイダーという、心肺蘇生のカリキュラムみたいなのを取りに行っておりました!専門医を取得するときにこのコースを取得していることが必要になるので行ったのですが、色んな状況を想定した心肺蘇生の練習を、模型とか用いてやるのですが、結構みっちりなので相当疲れました…。

そしてここからが本題なのですが、私もそれなりに医者を6年もやっているといわゆる「心停止」の患者さんを見ることがそこそこあるわけです。救えた命も救えなかった命もあって、救えたかもしれないのにな…と思う命もあったりします。

研修医の頃に見た、窒息で救えなかった2歳の子ども

私が研修医の頃の症例で印象に残っている心停止患者の一人が、2歳くらいの子どもでした。その子は窒息で心臓が止まってしまい、救急車で運ばれてきました。

この子は病院到着後になんとか心臓はもう一度動き出すことが出来たのですが、残念ながら心停止の時間が長くて意識は覚めないまま、数日後に命を引き取ることになりました。病院に来る数時間前まで元気に笑っていた子が突然こんな事態になってしまった、両親の気持ちを想うと本当に辛いなと思った記憶があります。

ゼリーを喉に詰まらせてしまったのですが、両親は喉に詰まらせて黒くなっていく自分の子を見てどうすれば良いか分からず、何度も揺すったり、呼びかけたりしていたそうです。そして救急要請して救急車で病院に到着していた時には心停止から30分くらいは経過していました。(正確な時間は忘れましたが結構な時間が経っていました)

病院に着く前に出来たかもしれないこと

この時の子を見て以来、私は子どもを持つパパさん、ママさんには子どもが窒息した時の応急処置はなんとか覚えていてほしいなとばかり思いました。

窒息が原因の心停止は適切な処置が出来れば元に戻ることも多いです。ただ、病院に着いてから蘇生を開始するのは手遅れになることが多いのも事実です。

この子が本当に救えたかどうかは分からないけれど、すぐに腹部突き上げ法で異物を出せれば助かった可能性は高いし、もう少し早く救急車を呼べなかったのかな…と思ってしまいます。

目の前で自分の子どもが倒れて冷静でいられる人なんていないし、実際パニックになってしまうかもしれないけど、それでも知識があるのとないのとでは対応は変わってくると思うのです。

子どもが窒息しそうなものを食べさせないのは勿論、窒息した時どうするかなんて一生使わない知識かもしれないけど、高い保険に入ったり将来のための貯金云々以上に「備えるべきリスク」じゃない?って思ったりします。

大人の緊急対応も知ってほしい

もう一つ、子どもがいる人もいない人も、成人の一時救命措置は身につけておいてほしいなとも思いました。一時救命措置と聞くと何それ?と思われるかもしれませんが、一言で言うなら「目の前で人が倒れた」あるいは「倒れている人を見つけた」時に何をすれば良いか?です。

たまに推理ドラマで倒れている人を見て、

「脈がない………!」

「そ、そんな………」

みたいなのがありますが、いやいやいや、まずは救急車と心臓マッサージじゃない?と、医療者の視点だと思ったりします。

まぁそれは半分冗談ですが、とにかく目の前で倒れる人、倒れている人を見たら助けを呼ぶ、救急車を呼ぶ、心臓マッサージが大事なのです。

人工呼吸もしてあげると良いのは確かですが、口対口は抵抗がある人も多いと思うのでそれで蘇生を躊躇ってしまうくらいなら心臓マッサージをしてあげるだけでもその後の予後は良くなると言われています。

倒れたその場で誰かがこうした蘇生行為を行うことを、医療者の間では“By Stander CPR”と呼んだりします。このBy Stander CPRが行われたかどうかでその人の予後は2~3倍良くなると言われています。つまり、もしも貴方の大切な家族が目の前で倒れてしまった場合、即座にこうした対応が出来るかどうかでその人の予後は2-3倍良くなるのです。特に「目の前で倒れた場合」はいつ倒れたか分からない目撃者なしの場合に比べて助けられる率も高くなります。

そして心臓マッサージは治療というよりは心臓を外側から押して脳に血液を送ってあげることで、脳を守るためのものです。残念ながら心臓マッサージをいくらしても、一度止まった心臓が動き出すわけではありません。あくまで心臓が止まってる間に脳が死んでしまわないようにするためにするのです。

それで一刻も早く心臓がもう一度動いてくれるように病院外でも出来る唯一の治療がAEDなのです。AEDって見たこと聞いたことはあるけど何者かあまり分からない方も多いと思うのですが、最近はコンビニやお店でもAEDを置いていることが多いですから、とにかく人を呼ぶ、この時出来れば誰かにAEDを持ってきてもらう、というのが出来ると良いです。

細かい話をすれば心臓マッサージのやり方も「胸骨(胸の真ん中上部にある骨)の下半分を」「胸が5cm以上沈むように」「1分間に100-120秒の速さで」などあり、こうした条件を満たすのが一応は重要と言われています。

ただ、非医療者の方からすれば一生に一度起こるかどうかも分からない「心臓マッサージをする」という状況で、こんな細かいやり方を気にしてやるのは困難極まりないと思うので、「とりあえずしっかり胸を押してそれなりの速さで!」くらいでもやるのとやらないとだと違います。実際一般の方のBy Stander CPRの率が増えたことで心停止の人の予後は改善してきているとの報告があります。

非医療者が緊急時の対応を学べる機会はある?

ここまで読んでもらえて、緊急時の対応って勉強してみたい!と思ってもらえたら、日本ACLS協会が一般の方でも受けられるハートセイバーコースというのを定期的に開催しています。

画像:日本ACLS協会 ‐ コースの種類

上記リンク先からも確認できますが、怪我や病気の人の応急手当や、心配停止となった人の緊急対応を学ぶコースです。ちなみに週末私が受けてたのは一番下のACLSプロバイダーコースです。

職場などでのこうした講習の実施がなく、今まで受けたことない!と言う方は有料にはなりますが万が一の場合に備えて一度受けてみてもいいんじゃないかなぁと思ってます。

日本ACLS協会のHPはこちら

まとめ

何が言いたいのかと言うと、自分の大事な人が目の前で倒れた時に即座の対応が出来るかどうかでその人の予後が数倍変わります。子どもの場合はより一層です。

一生使うことのない知識かもしれないけど、もし一時救命措置や子どもの万が一の場合の緊急対応など、学べる機会があればぜひ非医療者の方も身につけてほしいのです。

みんな万が一の場合に備えて生命保険に入ったりするじゃないですか?

それなら大事な人に万が一のことがあった時の知識も、備えるべきリスクじゃないでしょうか?

と思った日なのでした。

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エイミー
手術室にこもって麻酔かけてるお医者さん。投資や経済学に興味があって、仮想通貨やブロックチェーンなどのテック系にも興味があります。書きたいことをつらつらとブログに綴る雑食趣味ブロガーです(*´艸`)最近は医療系ブロックチェーンの解説とかもしてます。 詳細プロフィールはこちら Twitterも→Follow @amy_honobono